2004年

 

<風響社通信 No.11> 2004年1月2日


 第11号をお届けしますとともに、新春のご挨拶を申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。



1,昨年の新刊のご案内


 ◎『ヒンドゥー女神と村落社会 インド・ベンガル地方の宗教民俗誌』(外川昌彦著、1万円)は2月末刊行いたしました。

 ◎『文化のディスプレイ 東北アジア諸社会における博物館、観光、そして民族文化の再編』(瀬川昌久編、2500円)は3月末刊行いたしました。

 ◎『民族の移動と文化の動態 中国周縁地域の歴史と現在』(塚田誠之編、12000円)は3月末刊行いたしました。

 ◎『生寡婦〈グラスウィドウ〉 広東からカナダへ、家族の絆を求めて』(Y・ウーン著・吉原和男監修、池田年穂訳、3500円)は5月上旬刊行いたしました。

 ◎『比較日本文化研究 第7号』(比較日本文化研究会編、1500円)は5月中旬刊行いたしました。

 ◎『日本における華僑華人研究』(游仲勲先生古希記念論文集編集委員会編、8000円)は6月上旬刊行いたしました。

 ◎『台湾原住民研究 第7号』(台湾原住民研究会編、3500円)は8月上旬刊行いたしました。

 ◎『ベトナムの社会と文化 第4号』(台湾原住民研究会編、3500円)は8月上旬刊行いたしました。

 ◎『民族の語りの文法』(シンジルト著、4000円)は9月上旬刊行いたしました。

 ◎『韓国朝鮮の文化と社会 第2号』(韓国・朝鮮文化研究会編・刊、3500円)は10月下旬刊行いたしました。

 ◎『モンゴル英雄叙事詩の構造研究』(藤井麻湖著、6000円)は11月上旬刊行いたしました。



2,近刊予定のご案内


 ◎『中央アジア農村の親族ネットワーク クルグズスタン・カラタル村の経済移行と社会変化』(吉田世津子著、8400円)は2月末刊行予定です。

 ◎『中華民族多元一体構造論集』〈仮題〉(費孝通編著、菊池秀明・曽士才・塚田誠之・西澤治彦・吉開将人共編訳、価格未定)は3月末刊行予定です。


 ◎『中国映画の文化人類学』(西澤治彦著、2500円)は今春、再版予定です。来年度の教科書には間に合いますので、ご検討をお願いいたします。

 

 なお、今春予定として以下の書籍を編集中です。楽しみにお待ち下さい。


 ◎『韓国人類学の百年』〈仮題〉(全京秀著、岡田浩樹・陳大哲訳、価格未定)。

 ◎『友情と私利 香港一日系スーパーの人類学的研究』〈仮題〉(王向華著、価格未定)

 ◎『建築史家たちのアジア〈発見〉』〈仮題〉(村松伸編、価格未定)

 ◎『東アジア沿海地域における民俗文化再生過程の人類学的研究』〈仮題〉(三尾裕子編、価格未定)

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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 お健やかに新年をお迎えのことと存じます。日本経済も小康状態のようですが、小社もお陰様で(個人的に)タフだった一時期を乗り越え、なんとか元の作業状況に戻りつつあります。温かい声援を有難うございました。


 年頭にあたり、今年は、〈TVは〉見ざる、〈CDは〉聞かざる、〈愚痴は〉言わざる、ついでに〈酒も〉飲まざる、の苦行を課そうと発起しましたが、一夜明けたら、すでにサルが数匹去ってしまっており、さっそく「反省」をやっている次第です。


 ともあれ、まだまだ宿題・課題が山積しておりますので、昨年に増して奮闘努力を重ねる所存です。どうかよろしくお願いいたします。


 さて、通信10号において翻訳出版の困難さを述べましたが、送信した直後にそれは日本人からの視点のみだったことに気づきました。小社の刊行物を見ても、外国籍の著者が数多く日本語で執筆されていますので、その状況を少し紹介してみたいと思います。


 小社の人類学専刊で言えば、昨年刊のシンジルト氏(『民族の語りの文法』)、近刊の王向華氏(『友情と私利』)、それに潘宏立氏(『現代東南中国の漢族社会』)・王維氏(『日本華僑における伝統の再編とエスニシティ』)といった若手研究者が、自ら日本語で著述されています。これは既刊・近刊17点のうち実に4点を占めていることになります。


 さらに、他のジャンルに含まれる、劉枝萬氏(『台湾の道教と民間信仰』)や崔吉城氏(『韓国民俗への招待』)──日本の植民地時代を経験した世代の困難さは次元が異なるかもしれませんが──を加えると、小社の事例だけでも、老若の研究者が活発に日本語で発表されている状況を示しているでしょう。


 加えて、小社の雑誌や論集には、欧米圏を含めもっと多くの外国人執筆者が参加されていますので、日本におけるアジア研究という狭い分野でもグローバリゼーションの波が重層的に訪れていることが理解できると思います。


 ちなみに、文科省の1999年の統計から大学院生の数値を見ると(女性の数値は2000年のものを参考まで)、


  院生全体で、191,125人に対し、留学生48,246(25.2%)、女性54,216(26.4%)


  人文社会系で、43,138人に対し、留学生8,081(18.7%)、女性18,858(40.3%)


 また、2000年の留学生の博士学位取得状況は、


  入学総数2,783人のうち1,412人(51%)、文科系のみでは774人中、159人(21%)


 さらに、2000年の大学教員を見ると、


  総数150,563人に対し、外国人5,038人(3.3%)、女性20,314(13.5%)


 大きな分類しか入手できませんでしたので、こうした数値をどう読むか難しいところですが、これらの人たちの参加によって日本の学術界に新しい血(智)が加えられていることだけは確実だと思います。


 幸か不幸か、アジアにおけるアジア研究でも日本語一極集中という状況はないようですが、多極が集中する、すなわちハイブリッドな状況やコラボレーションが新しいものを生み出していくことは多くの歴史が示している通りです。


 しかしそこには、どうしても情報の一元化が要求され、共通の言語が必要になりますから、日本の学術界に身を置けば、日本語による発信・受信はやはり必要な作業となりのでしょう。


 編集という立場から著述の舞台裏を垣間見ることができますので、第一言語でない言語での論文作成に大変な苦労があることは知っています。日本語という非関税障壁によってぬくぬくとマーケットを独占している日本の出版社の一員としては、今後も可能な限りサポートに努めたいと思う次第です。


 2004年はナンバーワンの国の動向が大統領選挙がらみで揺れ動くことと思います。オンリーワンよりナンバーワンの忠勤を選んだわが首相の命運はゲリラ数人の行動によっても脅かされそうな危うさです。そしてわが憲法も。


 ちょうど百年前の1904年2月10日、日露戦争が始まりました。戦後日本の坂の上にはどのような雲がかかっているのでしょうか。


 身近なことでも国立大学の独立法人化が目前に迫り、石原改革に揺れる都立大学など、学術出版にたずさわる者として、大小を問わず政治状況から目を離せない時間帯が続きますが、今年もオンリーワンの素晴らしい研究成果を中心に、せめてアナザーワン(?)の版元を目指して頑張りたいと思っております。


 皆さまにとってよい一年でありますようお祈りいたしております。


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