2005年

 

<風響社通信 No.12> 2005年1月1日


 新年のご挨拶を申し上げます。ひさびさの第12号がなんと昨年正月以来と気づき、新春早々自分ながら呆れております。大変ご無沙汰、ご無礼をいたしましたが、本年もよろしくお願いいたします。



1,昨年新刊・再版のご案内


 ◎『中央アジア農村の親族ネットワーク クルグズスタン・カラタル村の経済移行と社会変化』(吉田世津子著、8400円)は2月末刊行しました。

 ◎『中国映画の文化人類学』(西澤治彦著、2500円)は3月上旬、再版しました。

 ◎『韓国人類学の百年』(全京秀著、岡田浩樹・陳大哲訳、6000円)は4月上旬、刊行しました。なお、本書は並製(6000円)の他に、保存用上製(8000円)もあります。上製本をご希望の方は、その旨明記して下さい。

 ◎『台湾原住民研究 8号』(台湾原住民研究会編、3500円)は6月上旬、刊行しました。

 ◎『友情と私利』(王向華著、3600円)は6月中旬、刊行しました。なお、本書は並製(3600円)の他に、保存用上製(5000円)もあります。上製本をご希望の方は、その旨明記して下さい。

 ◎『民衆道教の周辺』(可児弘明著、2500円)は8月中旬、刊行しました。

 ◎『韓国朝鮮の文化と社会 3号』(韓国・朝鮮文化研究会編・刊、3500円)は10月下旬、刊行しました。

 ◎『チンギス・ハーン祭祀 試みとしての歴史人類学的再構成』(楊海英著、2500円)は12月上旬、刊行しました。

 ◎『比較日本文化研究 8号』(比較日本文化研究会編・刊、1500円)は12月下旬、刊行しました。

 ◎『反・ポストコロニアル人類学 ポストコロニアルを生きるメラネシア』(吉岡政徳著、2500円)は12月下旬、刊行しました。



2,近刊予定のご案内


 ◎『民俗文化の再生と創造 東アジア沿海地域の人類学的研究』(三尾裕子編、3000円)

 ◎『中国の〈憑きもの〉 華南地方の蠱毒と呪術的伝承』(川野明正著、5000円)

 ◎『家屋とひとの民族誌 北タイ山地民アカと住まいの相互構築誌』(清水郁郎著、8400円)

 ◎『中国湖北農村の家族・宗族・婚姻』(秦兆雄著、6000円)

 ◎『中国人の宗教儀礼 道教篇』(大淵忍爾著、1万8000円)

 ◎『建築家たちのアジア〈発見〉』(村松伸編、3500円)

 ◎『ベトナムの社会と文化 5号』(ベトナム社会文化研究会編、3500円)



3,受賞のお知らせ


 ◎2002年末刊行の田口理恵著『ものづくりの人類学』が、今年3月に開催された日本オセアニア学会研究大会において、第3回日本オセアニア学会賞を受賞しました。これは、白川千尋著『カストム・メレシン』(第1回日本オセアニア学会賞)に続く受賞となります。



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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 多くの災害の傷跡を残しながら、あっという間に2004年が駆け抜けていきました。風水害や新潟中越地震で被災された方がたに心よりお見舞い申し上げます。


 文字通り「災」の年でしたが、申年とともに去って、色とりどりの酉年となってほしいものです。


 小社もさまざまなトラブルに見舞われ、たまった原稿やゲラの多さに比べて、刊行にこぎ着けた書籍はわずかです。


 通信を出すヒマがあったら仕事を急げ、などという声が聞こえそうで、ついつい出しそびれておりましたが、ある研究会で「通信はやめたの」などと叱咤激励を頂きましたので、本年こそは本も通信もバリバリ行こうと年頭の決意を固めているところです。


 とはいえ、例年以上に冬休みの宿題が多いものですから、初荷は軽快にQ&Aから参りたいと思います。


【Q:企画について】A:小社の場合、企画はいわば「出会い系」です。著者と価値観や感性が完全にフィットするのは難しいことですが、こちらがいい仕事をされているなあ、と感じ、相手が風響社が(でも?)いい、と思って下さる著者との出会いから、すべてが始まります。出会いの場は、紹介・自薦・他薦から飲み会で意気投合まで、さまざまです。


 どちらかと言えばフィールドの匂いがする、「泥臭い」民族誌や、がちがちの学術書が多いのは、トンネル工事で言えば切羽にあたる部分、つまり最前線で生きた情報を切り取り、新たな論点を切り開くようなものに引きつけられる社主の趣味かもしれません。


 逆に言えば、メタな論議=「泥臭い」情報をスマートに料理して読者に分かりやすく呈示するもの──これも一つの切羽でしょうが──には今のところ少し弱いかもしれません。今後、小社の著者の中から、そうした企画も多く生まれてくるのを期待することにしたいと思います。


 いずれにしましても、こちらから企画を持って押しかけるような力はあまりありませんので、あいつは一向にやってこないな、などと思わず、こんな原稿・プランがあるけど、などと気軽に声をかけて下さると有り難いですね。


 学会や懇親会でも、あまりご挨拶にも回らず、気ままにしゃべって飲んでいるサボり社主です。ここでもお気軽に声をかけてみて下さい。根はあっ軽い関西系・ラテン系です。そして出会った所が小社の「出会い系サイト」というわけです。



 こんなところで、Q&A第一弾とさせていただきます。ご質問があればいつでもメールを下さい。お待ちしております。



 さて、昨今はすっかりグローバル化し、知人・友人が世界中にちらばっていると言っても大げさでなくなりました。年末のスマトラ沖大地震とそれに伴う大津波でも、ひょっとしてあの人がいた地域はと確認に走るほどです。


 有名な“6 degrees of separation”theory(人は世界中のどんな他人とも,実は6人以内の人間関係で結ばれている、とするStanley Milgram博士の仮説)ではありませんが、人類はもはや関係性において6親等の家族ほど緊密なのだと言うことなのかもしれません。


 私などでさえ、ビンラディン氏はともかく、知人の知人の著名人……などとたどっていけば、ヨン様だって、ブッシュ大統領だって、6人以内の関係でつながることは十分可能でしょう。一人が100人の知人を持っているとして、理論上は100の6乗すなわち1兆人の広がりをそれぞれが持つわけですから。


 一方、これまた有名な「ミトコンドリア・イブの仮説」によれば、私たちは皆20万年前のアフリカの一女性を祖とするらしいので、親等はともかく人類はみな兄弟姉妹となってしまいます。


 以上のことからしても、この通信読者の方々はもはや皆身内、いや関係レベル一親等とすれば親子も同然(?)なわけです。真偽・理と事はともかくとして、小社としましては、こうした直つながる方々、そして直つながるであろう方々との関係をより一層大事に活動を続けたいと思っております。


 本年もますますのご支援ご鞭撻をお願い申し上げます。



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<風響社通信 No.13> 2005年7月5日


 蒸し暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。今年もはや半分が過ぎてしまい、気ばかりあせる毎日ですが、暑さを忘れる「ひやりはっと」事件が多発、これも暑さ対策と笑っていられないJAL症候群となっています。



1,新刊のご案内


 ◎『中国の〈憑きもの〉 華南地方の蠱毒と呪術的伝承』(川野明正著、5000円)は3月上旬刊行しました。

 ◎『家屋とひとの民族誌 北タイ山地民アカと住まいの相互構築誌』(清水郁郎著、8400円)は3月上旬刊行しました。

 ◎『中国湖北農村の家族・宗族・婚姻』(秦兆雄著、6000円)は3月上旬刊行しました。

 ◎『民俗文化の再生と創造 東アジア沿海地域の人類学的研究』(三尾裕子編、3000円)は4月上旬刊行しました。

 ◎『中国の民族表象 南部諸地域の人類学・歴史学的研究』(長谷川清・塚田誠之編、6000円)は5月中旬刊行しました。

 ◎『中国人の宗教儀礼 道教篇』(大淵忍爾著、1万8000円)は6月上旬刊行しました。



2,近刊予定のご案内


 ◎『幻の人類学者 森丑之助 台湾原住民の研究に捧げた生涯』(楊南郡著、笠原政治・宮岡真央子・宮崎聖子編訳、2500円)

 ◎『アジア市場の文化と社会 流通・交換をめぐる学際的まなざし』(宮沢千尋編、4000円)

 ◎『阿爾寨石窟 成吉思汗的佛教紀念堂興衰史』(バトジャラガル・楊海英著、「アルジャイ石窟」中文版、4800円)

 ◎『台湾原住民研究 日本と台湾における回顧と展望』(台湾原住民研究シンポジウム実行委員会編、2500円)

 ◎『台湾原住民研究 9号』(日本台湾原住民研究会編、3500円)

 ◎『ベトナムの社会と文化 5号』(ベトナム社会文化研究会編、3500円)



3,受賞のお知らせ


 ◎2003年9月刊行のシンジルト著『民族の語りの文法 中国青海省モンゴル族の日常・紛争・教育』が、今年5月に開催された日本文化人類学会研究大会において、第31回澁澤賞を受賞しました。これは、瀬川昌久著『客家 華南漢族のエスニシティーとその境界』(第24回)に続く小社刊行物の受賞となります。


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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 前半を終えようとする今年の特徴は「滞」ということになりそうです。あんなに騒いだ拉致も「滞」なら核も「滞」、日韓・日中も戦後処理という前世紀の呪縛をわざわざ呼び出しての「滞」、そしてEUも中東もすべて「滞」という閉塞感いっぱいの半年となっています。


 風響社も「滞」だ怠惰だ、とお叱りを受けつつ、なんとか目前の仕事をこなす毎日ですが、そんな中にうれしいニュースがありました。上記の受賞です。かの中根千枝先生も第二回受賞者に名を連ねる日本文化人類学界の「新人賞」的存在に、小社の刊行物が再び選ばれたのでした。もちろん著者の栄誉ですが、版元としても喜ばしく、刊行にご助力いただいた先生方およびトヨタ財団には改めて御礼申し上げる次第です。


 さて、最近とどいた通知の中に「Web上のデジタルコンテンツに対するISBN付与の基準」というものがありました。ISBN=国際標準図書番号とは、市販書籍の裏表紙に必ず印刷されているもので、世界中の書籍1点ずつに一つ割り当てられる「書籍の総背番号制」のようなものです。上記の『民族の語りの文法』の場合、ISBN4-89489-016-X となります。


 今回その規格が改定され、従来、紙の本にのみ付けられていた番号を電子図書の類にも付与できるようになった、ということなのです。このまま読めば、ホームページ上のコンテンツも書籍なみの著作物として認知されるようになったかと思われますが、どうもそれほど単純ではないようです。以下に日本図書コード管理センターHPの関連記事をかいつまんで引用します。(http://www.isbn-center.jp/)


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【経緯】2000年の会議で、アメリカ・イギリスからe-Bookの出現により現行規格だけでは付番できなくなってきたと、規格改定の提案があった。そこで、デジタルコンテンツ(電子配信される著作物)の付与対象の定義づけをワーキンググループに一任した。その中間報告が2002年の総会で報告されたが、それによると、

(1)アメリカ・イギリスにおけるWeb上のデジタルコンテンツへの付与は「学術的な情報が多く、更新も多い」

(2)「多くの国ではISBNが著作権管理に利用されている」

(3)「アメリカ・イギリスなどは、申請があればすべて付与対象としている」

(4)「クロアチアでは国立図書館の収集対象基準に合わせ、40頁を超えるものは付番対象にしている」など、国により付与対象の定義が異なり、問題となっていた。


【日本の事情】日本ではこれまで、電子書籍などのデジタルコンテンツへの付番を「当面、対象としない」としてきたが、電子書籍の2003年の新刊は、出版年鑑の調査によれば約1万8000点、現在計5万点ぐらいに拡大している。また、流通上も統一コードが必要となってきている、という電子出版関係者からの強い要望もあり、以下のような基準で付与する方向に転換した、という。


 基準:国際基準でISBNの対象外とされたもの、たとえば、オンラインデータベース等、恒常的に更新されるもの、ウェブサイト、販売促進もしくは広告物、電子掲示板、私的文書、ブログなど、それに雑誌はISBNを付けられない。


 出版者の義務:

(1)ISBNを原則としてタイトルページまたはトップページに目視可能な大きさで表示する。

(2)責任の所在を明記し、変更があれば連絡すること

(3)書名記号を付与し、管理すること。書名記号は出版者のみが付与の権限を持つ。

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 米英の決めるスタンダードに対しておずおずと舵をきってついていく日本の状況がここにもあるようですが、現実に適応するとどうなるのでしょうか。小社の場合ならとりあえず、HP上にオリジナルまたは紙の本からのコンテンツを電子本としてアップし、それに番号を付ける、というようなことになります。


 読者の皆さまの場合ならどうでしょう。実はISBNというのは出版社の独占というわけではなく、個人でも申請すれば与えられる番号群なのです。日本には一応表現や出版の自由があるわけですから当然のことなのですが、あまり知られていません。ともかく今回の規定により研究者や研究会が独自に番号群を取得し、電子コンテンツに規定通り番号を付けたら、国際的に電子書籍として認知される、ということになります。


 おそらく米英ではこうしたデスクトップな出版が日々行われている一方、日本では業界主導の「基準」の中で、相変わらず制度化された出版界という機構が温存されていく、明治以来の「お上」スタイルの踏襲のように思われます。


 米英のグローバルスタンダードも嫌だけど、日本の官民一体型談合社会も嫌、という中で、日々業務に忙しい社主としては、特に異論を唱えたりする時間も余力もありませんが、ともかく日本でも出版は自由(なはず)だということを、ここだけの話としてお知らせする次第です。


 出版の自由をハードとソフトで具体化したDTP(デスクトップパブリッシング)のアップルも米英文化なら、グローバルスタンダードを体現するマイクロソフトも米英文化です。抬頭しつつあるもう一つの巨人=中国のスタンダードも日本とは随分異なるようですが、こんなややこしい巨人たちと同居する狭い地球という見方を捨てて、ミクロな等身大の視点で複雑多様な地球を再発見していきたいものです。


 今年も猛暑では、小社の「ひやりはっと」も多発するかもしれませんが、お気づきの点はどうぞお知らせ下さい。では、よい夏を。おっとその前に仕事ですね。


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