2006年

 

<風響社通信 No.14> 2006年1月1日


  通信14号をお届けしますとともに、新年のご挨拶を申し上げます。本年もどうかよろしくお願い致します。



1,昨年の新刊のご案内


 ◎『幻の人類学者 森丑之助 台湾原住民の研究に捧げた生涯』(楊南郡著/笠原政治・宮岡真央子・宮崎聖子編訳、2500円)は7月下旬刊行しました。

 ◎『阿爾寨石窟 成吉思汗的佛教紀念堂興衰史(アルジャイ石窟 中文版)』(巴図吉日拉・楊海英著、4800円)は7月上旬刊行しました。

 ◎『シンガポール国家の研究 「秩序と成長」の制度化・機能・アクター』(岩崎育夫著、5000円)は9月下旬刊行しました。

 ◎『韓国朝鮮の文化と社会 4号』(韓国・朝鮮文化研究会編・刊、3500円)は10月上旬刊行しました。

 ◎『汀江流域の地域文化と客家』(蔡リン著、5000円)は10月中旬刊行しました。

 ◎『比較日本文化研究 9号』(比較日本文化研究会編・刊、1500円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『アジア市場の文化と社会』(宮沢千尋編、4000円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『台湾原住民研究 9号』(台湾原住民研究会編、3500円)は12月下旬刊行しました。



2,近刊予定のご案内


 ◎『台湾原住民研究 日本と台湾における回顧と展望』(台湾原住民研究シンポジウム実行委員会編、台湾原住民研究別冊2、2500円)

 ◎『ベトナムの社会と文化 5号』(ベトナム社会文化研究会編、3500円)

 ◎『民族生成の歴史人類学 満州・旗人・満族』(劉正愛著、5000円)

 ◎『東アジアからの人類学 国家・開発・市民』(伊藤亜人先生退職記念論文集編集委員会編、3500円)

 ◎『ベトナムの道教と民間信仰』(大西和彦著、6000円)

 ◎『「女神の村」の民族誌』(杉本星子著、3600円)



3,15周年記念セールのご案内


 おかげさまで、2006年1月16日をもちまして小社も創業15周年を迎えます。これを

記念して、風響社通信の読者の皆様に限り、全点2割引き・消費税なしの特別優待販売を行うことといたします。


 期間中(今年1月末まで)に、メールにてお申し込み下されば、公費・私費を問わ

ず、優待価格+送料380円(お買い上げ3000円以上は無料)でお送りいたします。近刊書籍のご予約も承り、出来次第特価でお送りいたしますので、どうぞご利用下さい。


 なお、ご注文メールには必ず「記念セールへの注文」の一文を書き添えてください。


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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 例年にない寒さの中ですが、お健やかに新年をお迎えのことと存じます。


 この16日には、お陰様で小社も創業15年の節目を迎えることになります。古巣から素手で飛び立って全く新しい分野での出版活動となったにもかかわらず、なんとか今日まで歩んでこられたのも、この通信をお送りする皆さま方の温かいご支援があったからと深く感謝いたしております。


 まだまだ力不足ですが、小社のような小出版の存在が必要とされる限り、そして体力の続く限り、従来通りの歩みを続けて参りたいと存じますので、変わらぬご支援をお願い申し上げます。


 さて、遅々たる歩みとは言え、15年を経ると小社にも個性のようなものが見えてきたように思えます。版元の個性とは出版物のリストに他なりませんから、それは小社を選んで下さった著者・編者の方々の個性の融合が醸し出す味・香りということになります。


 重厚なベテランの味をベースとすれば、スパイスとなっているのは小社でデビューされるような若手著者群でしょうか。そこには東アジア各国の方が含まれ、創業時の予想を超えた風味となりつつあるようです。


 また、けして売れ筋ではない路線をなんとか維持出来てきたのも、よく考えるとやはり絶妙な役割分担があったようです。


 すなわち、既刊本の売上げや各種の助成金によって生まれた資金的余裕が、売れ行きの見通しが立たないような新刊の発行を可能にしているわけで、一種の「頼母子講」が小社の財布の中で成立しているからです。


 小社のカラーの一つとなりつつある、若手著者の踏み石的役割を今後も果たすためには、「富裕層」的著者のご理解(これこそ小社にとっての孵化器となりますが)を引き続きお願いしたいと思っております。


 幸い、学術界では「貧困層」的著者がいつまでもそこに留まるような「階層二極化」現象は定着していないはず(?)です。いつまでもオムツのとれそうにない小社ではありますが、小さな循環型社会の実現にもう少し力を入れられたらと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。


 なお、10周年と同様に記念セール期間を設けましたので、どうぞご利用下さい。また、小社での出版を考えておられる方のために、HPに小さな手引きを設けました。これはひつじ書房の松本功社主の提言に触発されてのことですが、これからの方はご参照下さい。


 時代は人口減少の下り坂にさしかかり、国力衰退が叫ばれておりますが、この地球全ての人びとがアメリカのような「富」を享受することがもはや不可能なのは明らかなことでしょう。崖っぷちが見えたチキンレースからうまく降りる道を探すことこそ、老齢化先進国・日本の役割のように思います。


 もっとも、業界のチキンレースの後塵を拝し続けている小社なんどが言うべきセリフでないことも確か。偽装するほど高度な技術製品ではありませんので、せめて無駄な本を作らないことを当面の課題とすべきでしょうか。


 次の5年に向けて新しい眼鏡を作りました(老……です)。とりあえず、もう一度われと我が身を見つめ直そうと思う元旦ではあります。


 では、本年も皆さまのますますのご活躍をお祈り申しております。


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<風響社通信 No.15> 2006年7月1日


 通信15号をお届けします。上半期の出版が一段落しましたので、そのご報告と夏のご挨拶です。



1,新刊のご案内


 ◎『台湾原住民研究 日本と台湾における回顧と展望』(台湾原住民研究シンポジウム実行委員会編、台湾原住民研究別冊2、2500円)は1月下旬刊行しました。

 ◎『民族生成の歴史人類学 満州・旗人・満族』(劉正愛著、5000円)は2月下旬刊行しました。

 ◎『東アジアからの人類学 国家・開発・市民』(伊藤亜人先生退職記念論文集編集委員会編、3500円)は3月上旬刊行しました。

 ◎『〈女神の村〉の民族誌』(杉本星子著、3600円)は3月下旬刊行しました。

 ◎『ベトナムの社会と文化 5/6合併号』(ベトナム社会文化研究会編、3500円)は3月下旬刊行しました。

 ◎『台湾原住民研究 10号』(台湾原住民研究会編、3500円)は6月上旬刊行しました。

 ◎『戦後台湾における〈日本〉』(五十嵐真子・三尾裕子編、3000円)は6月上旬刊行しました。



2,近刊予定のご案内


 ◎京都文教大学文化人類学ブックレットシリーズ 第1冊、第2冊

  『スポーツをフィールドワークする フィジー』(橋本和也著)

  『サリー! サリー! サリー! エスニック・ファッションをフィールドワーク』  (杉本星子著)


 ◎『中国文化人類学リーディングス』(瀬川昌久・西澤治彦編訳、価格未定)

 ◎『〈血縁〉の再構築』の再版(吉原和男編、3000円)

 ◎『中華民族多元一体構造論集』(費孝通著、価格未定)


 その他、遅れ気味のものも鋭意準備中です。


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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 サッカーは惨敗するし、梅雨空にテポドンぼちゃり、などさっぱりしない話題が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。


 「論理するどく行動きびしき学生の父の多くは戦ひに死す」(岡野弘彦)


 これは、先日(7月5日)の朝日新聞の「折々のうた」で紹介された一首です。大岡信氏の解説によれば、60年安保当時、教授として学生運動の渦中にあった作者がえがく学生の肖像、手ごわい好敵手である学生の父親の多くが、先の大戦に召集され、無念にも戦死した兵だった、とのことです。


 ……戊辰戦争から先の大戦まで、近代日本はあまりにも多くの真っ正直で勇敢なDNAを消耗してきたのだから、ずる賢いのが目立つのも仕方ない。白虎隊から特攻隊まで優秀な人材は真っ先駆けて死んでいき、うまく立ち回った奴らの子孫が増えてしまったのさ……。


 これは社主が飲み屋でつぶやく戯れ言の一つですが、上の歌を見て、こんな戯れ言にも一分の理があるのかと思い、くやしさ紛れに記した次第です。


 すなわち、この論を敷衍するとサッカーにも当てはまりそうなのです。敵陣に攻め込む人材が少なく、中盤で前線を指図するタイプがやたら多いのも、戊辰戦争から先の大戦まで……、だから決定力がないんだ、と。


 サッカーファンや頑張った選手にはご免なさいですし、英霊にも生還された方にも誠に失礼ですね。でも、それにしても、前線にもしカマモトがいれば、と思ったおじさん世代は私一人ではないように思います。


 さて、最近小社の装丁が変わったことにお気づきでしょうか。実は創業以来、装丁デザインを一手に引き受けてくれていたH氏が昨年夏急逝され(享年59歳)、以後何人かの方に実験的にお願いしているところなのです。


 数年前に校閲を時折りお願いしていたI女史を亡くしたばかりで、また小社は貴重なスタッフを失ってしまいました。幸いH氏の子息が父親の跡を継ぐべく勉強されており、I女史の追悼文集編纂の過程で古い友人たちと再会したことから、新たな社外スタッフの輪が生まれつつありますので、いずれ違った風合いを感じて頂けるものと思っております。


 さてまた、先日は東大・駒場で開催された日本文化人類学会の研究大会に参加しました。小社の書籍の過半は人類学系ですので、欠かさず売店を出すのですが、楽しみはなんと言ってもいろんな方に直に会えることです。


 極少のスタッフしかいない小社ですので、打ち合わせを除けば研究室訪問の時間などなく、学会や研究会は一挙に大勢の方と接触できるまたとない機会ですし、パソコンの前に座りっぱなしの社主にとって貴重な外出・出張のチャンスでもあるわけです。


 書籍を並べてただ座っているだけなのですが、老若男女さまざまな方が訪れてくれて、本を介していろいろな会話が生まれます。高いね、ちょっとねと価格・内容に文句をつける方も貴重なコメンテーターですし、出来たての新刊をお渡しする執筆者、原稿やゲラを持って来られる方、企画の打ち合わせや打診もあり、十数回分の外出・出張でも収まらないほどのやり取りがわずか二日の内に出来てしまいます。


 別の楽しみもあります。日本の人類学では博士課程の内に1年から数年の長期滞在型のフィールドワークを行い、それを博士論文などに結実させることが多いのですが、研究会などでうろうろしていた学部や修士の若者達がそうした長旅を終えて戻ってくると、すっかり逞しくなっていて、見違えるようです。


 最近は現地でもインターネット環境が整い、メール交信によって情報網が確保できる地域も増えているようですが、こうした時代でも物理的な距離、異文化に直に身を置いての生活は事実なのですから、やはり「イニシエーション」にはふさわしい体験というべきでしょうか。


 私自身は残念ながら長期滞在の経験はなく、こうした体験のエッセンスである論文を日々読み続けるだけで、アームチェア人類学ならぬデスクトップ人類学となり、今やすっかり「黄昏の中盤」状態なのを危惧しています。


 そんなわけで原稿に接する時には敬意をもち、なるべく新鮮な眼で「初めての読者」としての驚き・疑問を感じるように心がけたいと思っています。もっとも最近は老化によって、このあいだ読んだのも忘れてしまうので、常に「初めて」感覚が維持できている(?)というのは、皮肉な現象かもしれません。


 いよいよ夏休みですね。多くの研究者が短期出張でフィールドに赴かれるため交信も途絶え勝ちとなって、小社では一年で一番仕事に集中できるシーズンとなります。数日読書会仲間と恒例の「見立て」合宿に出かけるのが多少の充電でしょうか。今年はロシアの古典を読んでいるのですが、韃靼海峡を渡ることは諦め、函館でロシアの匂いを嗅いで来ることになりそうです。温泉に浸かって何がロシアだっていう声も聞こえそうですが、直に足で関係史跡を回る作業も行いますのでデスクトップパブリッシャーには充分な刺激ではあります。


 では、収穫多い夏をお祈りしております。


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