2008年

 

<風響社通信 No.18> 2008年1月1日


 新春のご挨拶を申し上げますとともに、通信18号をお届けします。今年もどうぞよろしくお願いいたします。



1,新刊のご案内


 ◎『植民地台湾を語るということ 八田與一の「物語」を読み解く』(胎中千鶴著、600円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『東南アジア年代記の世界 黒タイの「クアム・トー・ムオン」』(樫永真佐夫著、800円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『風水思想を儒学する』(水口拓寿著、800円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『清朝の蒙古旗人 その実像と帝国統治における役割』(村上信明著、700円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『在日朝鮮人のメディア空間 GHQ占領期における新聞発行とそのダイナミズム』(小林聡明著、800円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『ビルマ古典歌謡の旋律を求めて 書承と口承から創作へ』(井上さゆり著、700円)は11月上旬刊行しました。

 ◎『モンゴルの仮面舞儀礼チャム 伝統文化の継承と創造の現場から』(木村理子著、800円)は11月上旬刊行しました。


 以上7点は、いずれもブックレット《アジアを学ぼう》シリーズ第一期です。


 ◎『蒙古源流 内モンゴル自治区オルドス市档案館所蔵の二種類の版本』(モンゴル学研究基礎資料2、楊海英編、3200円)は12月上旬刊行しました。

 ◎『文化の政治と生活の詩学 中国雲南省徳宏タイ族の日常的実践』(長谷千代子著、5000円)は12月中旬刊行しました。



2,新企画の動きなど


 ◎今年2008年は、ブラジルへの日本人移民100周年にあたります。それを記念して現地で編集が進められていた決定版の目で見る100年史を、この春、小社で制作・刊行する運びとなりました。


 戦前・戦後を通じ、およそ25万人の日本人がブラジルに移住し、今や6世にいたるブラジルの日系コミュニティは150万人といわれ、ブラジル社会のさまざまな分野に進出、質・量ともに他地域では見られない広がりを見せています。また日本におけるブラジル人の就労者も30万人を超えています。


 残念ながら、こうした歴史的事実と現実は、日本国内においてはこれまでほとんど関心を向けられることはありませんでした。しかし、多民族・多文化との共生を迫られつつある今日の日本にとって、この100年の日系移民の経験は貴重な財産だといえます。


 小社としても、微力ながらこのプロジェクトに参画し、日本の近代について新たな視角を加えるような出版にしたいと思っています。現在鋭意作業中で、4月には刊行の運びとなりますので、どうかお楽しみに。


 また、昨年秋始まりましたブックレット《アジアを学ぼう》シリーズは、お陰様で好評を頂き発売中です。昨年末には第二期の打ち合わせが行われ、今秋にはまた魅力的なラインアップでお楽しみ頂ける予定です。



3,近刊予定のご案内


 ◎『近代日本の植民地博覧会』(山路勝彦著、3000円)

 ◎『葬儀の植民地社会史 帝国日本と台湾の〈近代〉』(胎中千鶴著、4000円)

 ◎『中華民族多元一体構造論集』(費孝通編著/菊池秀明・曽士才・塚田誠之・西澤治彦・吉開将人共編訳、価格未定)


 その他、遅れ気味のものも鋭意準備中です。


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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 例年通り、紅白を見ながら書いた年賀状を除夜の鐘の鳴る深夜に投函し、この通信を書きながら元旦を迎えようとしています。年度末の仕事が多いので年末年始はいつも通過点のように過ぎ去りますが、それでもやはり新年、ぼやけた頭にも新たな気持ちが湧いてくるから不思議です。


 2008年はどのような年になるのでしょうか。まだ分かりませんが、富める者にも貧しいものにも平等に与えられた時を一番実感できる新春にあたり、まずは良き年であることを祈りたいと思います。


 とはいえ、おそらく今年も温暖化はキーワードの一つでしょう。森林資源を大量消費する出版社にとって、二酸化炭素排出への反省は重く、生業とはいえ、このまま漫然と同じ業態を続けていっていいのかという思いにもかられます。無駄とはいわれないような本を、今年も積み重ねたいと念じる元旦ではあります。


 さて、そのように出版社は著作物の複製を作成し販売することを業務としており、行政的には製造業に分類されています。著作物を創作した人には法的に著作権が生じるものとされ、著作権を保持する人から出版権を設定して頂くことによって、版元が独占的にその著作物の複製を作り販売できることとなっているのが、今日の通常の出版ルールです。


 著作権の概念が生まれたのは、人権などと同様、西洋で、それほど古い概念ではありません。著作権の原語=copyrightをよく眺めてみると、複製の権利すなわち上記の出版権に当たる語義ですから、これらの概念が印刷技術の誕生に由来することは、実は明白な歴史なのです。


 つまり、グーテンベルグの活版技術により複製頒布が広がり、やがて原板の独占を狙った印刷・出版業者が排他的に主張し始めたのがコピーライトの起源だったわけです。今日の法律では、著作権を著作者人格権と著作権(財産権)に分けておりますが、一般には全体を人格権のように混同されているのが現実です。


 法理の話はさておいて、ちょっと観点を変えて、本は誰のものか、という話にしますと、それは著者のものだろうと一般には思われますが、それはほんの一部の側面にすぎません。商品財産としては最初は出版社のものですし、出荷後は問屋さんのもの、店頭では書店さんの、そして買われれば読者の所有物です。


 内容的にみても、文章は著者のものでしょうが、装丁はデザイナーのものですし、組版は印刷所です。そうしたものを総合して本にしたのは編集者ですから、全体としての本のイメージは編集者のものとも言えそうです。


 しかしやはり、一般論として著者がもっとも大きな権利を主張できることは言うまでもありません。でも今度はあらためて、その著作の内容は、はたしてどのくらい著者のものなのか、と問えば、そこにもまた複雑な問題が出てきます。


 文学はさておき、学術論文を例にとりますと、およそ独創的と言われる優れた論文であっても、それを独創的と主張するためには、ありとあらゆる先人の論文が例証されなければなりません。同時にまた、読者に納得してもらうためには、多くの先人の論拠を踏まえるわけですし、それを消化しアレンジした部分も多く、それがうまくできた論文ほど説得力があるということにもなります。


 でも、学術書でも血肉となるような読まれ方をする基本書もあり、また誰しも一冊ぐらいはある愛読書などというのは人生に重なるかけがえのない「財産」なわけですから、読者にとっては上記の論議も、また「そんなの関係ない」話となります。


 さて一方、近年欧米ではグーテンベルグ計画などで、古今の著作物の電子情報化の作業が進められており、日本でも国会図書館や青空文庫などの動きがあります。また昨今では、グーグルやアマゾンなども書籍の丸ごと電子情報化に力を入れていて、うっかりするとCDが電子配信にとって替わられたように、書籍も絶滅危惧種になりそうな流れが透けて見えているほどです。


 おそらく、それらの動きはもはや止められず、加速度的にあらゆる著作物の電子化を推し進めるでしょうから、その暁にはインターネットを開けば、どんな著作も水道のようにじゃーじゃーと(引用・参照に、そしておそらくは盗用にも)使える時代はもはや目前です。


 それは商業的にも大きなインパクトでしょうが、著作者の世界にも大きな衝撃を与えると私などは想像しています。つまり、何かを書こうとする時、たちどころに参照文献全文が手に入るのは当然として、時として、自らのアイディアのほとんどがその巨大な著作物集成の中のどこかに含まれているという状況が見えてきそうだからです。


 でもそれは、そもそも人間の「知」というものは最初から大きな樹木のようなものだった、あるいは神の恩恵だった、などという人類原初の「共有・共生」の考え方を活用できれば、豊かな再生産が見えてきそうな世界でもあります。


 いずれにしましても、ロマン主義的な著作至上主義はすでに古色蒼然としておりますが、今日の資本主義的なインディビデュアルな著作とその囲い込み、という風景にも大きな曲がり角が来ているのだろうと思います。


 著作権を少し斜めに見すぎた論だったかもしれませんが、一生懸命に豊かな生活を追い求めてきた結果が、ヒマラヤや北極を融かし、多くの谷間や小島を消滅させている21世紀の今日、人間の営みなどというものの「巨大さと小ささ」に思いを致さざるをえません。


 おっとそうそう、このような駄文を書き連ねているうちに、わがアイドル=しょこたんこと中川翔子ちゃんの出番が来てしまいました。この人の聖子ちゃんぶりなど絶品なのですが、これは著作権? 人格権? うーーん、とりあえず私の「独占権」ということにでもしておきたいところです。


 ということで、年頭から「省察」と「熱狂」の老アキバ系社主ですが、今年もどうかよろしくお付き合いのほどを。


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<風響社通信 No.19> 2008年6月17日


 この度の四川大地震の被災者の皆さま、関係者の皆さまに心からお見舞い申し上げます。

 さて、今年ももう半分ほど過ぎてしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか。通信19号をお届けします。



1,新刊のご案内


 ◎『近代日本の植民地博覧会』(山路勝彦著、3000円)は1月下旬刊行しました。

 ◎『葬儀の植民地社会史』(胎中千鶴著、4000円)は2月下旬刊行しました。

 ◎『ベトナムの社会と文化 7号』(ベトナム社会文化研究会編、3500円)は3月上旬刊行しました。

 ◎『台湾外省人の現在 変容する国家とそのアイデンティティ』(S・コルキュフ著、上水流久彦・西村一之訳、2500円)は3月下旬刊行しました。

 ◎『欧米人の見た開国期日本 異文化としての庶民生活』(石川榮吉著、2500円)は4月上旬刊行しました。

 ◎『目でみるブラジル日本移民の百年』(ブラジル日本移民史料館・ブラジル日本移民百周年記念協会百年史編纂委員会編、1905円)は4月下旬刊行しました。

 ◎『民族表象のポリティクス 中国南部における人類学・歴史学的研究』(塚田誠之編、5000円)は6月上旬刊行しました。

 ◎『比較日本文化研究 11号』(比較日本文化研究会編刊、1500円)は6月中旬刊行しました。

 ◎『中華民族の多元一体構造』(費孝通編著、菊池秀明・曽士才・塚田誠之・西澤治彦・吉開将人共編訳、3000円)は6月中旬刊行しました。



2,書評ぞくぞくと


 どういう風の吹き回しか、このところ小社刊行物の書評が新聞に続々と掲載されております。


 朝日新聞12月9日『韓国サーカスの生活誌』(林史樹著)

 日経新聞2月24日『近代日本の植民地博覧会』(山路勝彦著)

 朝日新聞3月9日『近代日本の植民地博覧会』(山路勝彦著)

 朝日新聞4月20日『葬儀の植民地社会史』(胎中千鶴著)

 朝日新聞5月18日『台湾外省人の現在』(S・コルキュフ著)

 中日新聞5月18日『目でみるブラジル日本移民の百年』(同編纂委員会編)

 東京新聞5月18日『目でみるブラジル日本移民の百年』(同編纂委員会編)

 (ブラジルは県紙でもかなり取り上げられていますが、割愛させて頂きます)

 読売新聞5月25日『葬儀の植民地社会史』(胎中千鶴著)

 朝日新聞5月25日『欧米人の見た開国期日本』(石川栄吉著)


 新刊のご案内と見比べて頂くとお分かりのように、単行本の全てが書評に載る「快挙」となっております。これほど集中的に取り上げられることは、おそらく大手でもまれなことと思います。


 たまたま書評向きの本が揃ったこともありますが、既刊本が作り上げてくれた小社の「ブランドイメージ」のようなものもきっと影響していることと思います。これも日ごろからの皆さまのご支援の賜物と深く感謝申し上げる次第です。



3,近刊予定のご案内


 ◎『日本人の中国民具収集』(芹澤知広・志賀市子編、2000円)

 ◎『モンゴルのアルジャイ石窟 その興亡の歴史と出土文書』(楊海英編、5000円)


 その他、遅れ気味のものも鋭意準備中です。


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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 梅雨の晴れ間は夏だったり秋だったり、今年はこれからどのようなことになるのでしょうか。ガソリンも書籍用紙も値上げ値上げで、北極熊と風響社のどちらが先に音を上げるのか、田端界隈のもっぱらのうわさ話となっている……かもしれません。


 さて、上でもご紹介しましたように、立て続けに書評に取り上げられています。『ブラジル』関係者のご尽力による引き合いと重なり、うわさ話も吹っ飛ばす「特需景気」に湧いているところです。ただ、発送・出荷・電話応対などの業務がいっきに増え、次の本を出すための編集作業になかなか時間が割けない状態が続いております。


 人材難にあえぐ零細企業にありがちな「繁忙倒産」という言葉が妙にちらつくこの数ヶ月でしたが、お陰様で(?)少しずつ普段の風響社に戻りつつありますので、どうかご安心(??)下さい。


 ただ、これだけ書評されると、普段の読者とは違ったタイプの方も多くなり、時おり応対に困惑する場面も出てきます。例えば先日も、『欧米人の見た開国期日本』を買われた読者から「お前のところの本は2500円も取っておいて、どうして紐ぐらい付けないのか」というお叱りの電話が入りました。


 「紐」というのは、よく聞くと本の綴じ目上部から垂れる、業界用語では「スピン」というしおり紐のことでした。老舗版元の書籍や読み物にはよく付けられていますが、腰オビと同様、欧米の書籍には見られない日本独特の習慣のようです。オビは本の概要を素早く知ることができ、スピンは読みかけの頁や気になる頁を簡便にマークでき、それぞれ日本の書籍文化がはぐくんだ「用の美」とでもいうべき存在かもしれません。


 小社では付けたことがありませんが、どうしてと問われてもそれほどの理由はなく、ただ経費節減とスピンをむしろ邪魔だと感じる社主自身の趣味の問題ということになります。このあたりの感覚は「文学」系の出自ではない社主の、造本に「耽溺」「頓着」しない部分なのかもしれません。そうした盲点をおそらく普通の読書家であろうその方が鋭く突いてくれたわけです。


 最近贈呈いただいた台湾の書籍にはスピンが色違いで2本つけられていました。経済発展とともに最近の台湾書籍の造本は堅牢豪華となり独特の味わいを醸し出していますが、もし、スピンが日本書籍文化の伝播なり踏襲だったとすると、興味深い書籍文化史のディテールといえるでしょう。


 事務所縮小のため、資料書籍の大半を倉庫に移してしまい、手元に参照できるほどのものがありませんが、台湾・中国・韓国その他の書籍を造本仕様で見比べてみると、きっと面白い「比較文化史」となるのだろうと思います。


 こんな思いが頭を巡り、言いよどんでいたことに苛立ったのか、「名前は、何部、何課に所属しているのか」とその読書家は問われました。「ごもっともでございます。ご主人さま」とメイドよろしく答えればよかったのかもしれません。電話の向こうが「机と電話だけ」という伝統的な零細出版の現場(今はパソコンが加わりますが)だということは、おそらく想像もつかないことだったのでしょう。


 さて、こうした「異文化」にさまざま遭遇した数ヶ月でしたが、一番大きな異文化はなんと言ってもブラジルでした。ブラジルとの遭遇の顛末については業界紙に寄稿しましたので、もし興味やお時間あればご一読下さい(http://www.bekkoame.ne.jp/~much/access/acj/acj-bk.html)。ただし、掲載紙(6月号)のアップは7月末ごろになりそうですので、暫定的に、以下からダウンロードできるようにしておきました。


http://www.fukyo.co.jp/14-down.html


 小社は主義主張や信念で企画する「理念系」版元ではなく、「出会い系」というか「ご縁」まかせのイイカゲン主義、よく言えば人間の絆でかろうじて生きている版元ですので、ブラジルも当然そのような経過をたどって出版に至っています。


 ただ、従来と少し違うのは、それがブラジル日系人の歴史だったということです。たとえば、共時的な視点に立つ文化人類学でも中国などという巨大な歴史的沈殿の重層に相対するとき、通時的な視点をも加えなければ理解しにくいことは当然のことと思われます。逆の立場にある歴史学などにしてももまたそうでしょう。


 小社の書籍のかなりは、そうした縦軸と横軸に目配りされた方法・内容ですが、ブラジルという別天地の登場によって、少なくとも社主の眼はさらに大きく見開かれた思いをしています。


 すなわち、地球の裏側にこの百年の間、日本から携えていった文化を(姿かたちの変化や多様化はあるとしても、なんとか)保持しながら生きてきた人たちがいた、という当たり前の事実にあらためて気づかされたからです。


 いわば、横軸が数万キロほど延びた地点に、日本近代と微妙に重なりながら縦軸を延ばしてきた社会があったということになります。旧植民地などもそうですが、そうした地域に目を向けることによって、日本近代というものの地平が広がる、というか、一次元が二次元になる、二次元が三次元になるほどの視覚変化がある、という体験になるわけです。


 ちょっと大げさな表現になりましたが、老社主にとっては思いがけない久しぶりの新天地というわけで、大いに目を開かされ、ある意味でわくわくしているところです。


 百年というのは面白い時間と思います。学生の頃、恩師はほぼ前期高齢者、明治を見、大正を謳歌し、昭和をくぐり抜けてこられたその眼を見ていると、一種の鏡のように感じることがありました。


 この眼は例えば関東大震災を見たのだ、東京大空襲を見たのだ、坂口安吾を見たのだ、などと思いながら、懐旧談に耳を傾けると、その父上は維新の頃の生まれだし、お祖母様の語りには幕末の話題が普通にまじるわけです。恩師の眼や語りから果ては江戸までを身近に感じたこの不思議な体験は、その後も幾度かありました。


 満洲引き揚げを語る旧満鉄職員、日本時代を語る台湾の古老、朝鮮戦争をくぐり抜けた初老の学者などなど。パルテノンや敦煌に立った時の身震いと同じような、胸騒ぎにも似たわくわく感とともに、聞く者に歴史を追体験させてくれます。


 すなわち、百年3世代というのは、記憶と歴史の端境をなす、人間の手が届く「来し方」であろうと思えるのです。アジアには近代日本が残したところの「来し方」の記憶が、語りや眼という手鏡によっていまだ生々しく見えている現場があるように、遠くブラジルにもそうした現場があったということになりましょうか。


 広がった縦軸・横軸から今後またいくつかの本が生まれてくることと思います。社主としては、このわくわく感や生々しさを伝えられるような本をより多く作りたいと改めて思っている次第です。


 相変わらず仕事が滞り気味でご迷惑をおかけしておりますが、どうぞご海容のほどお願いいたします。また季節柄どうかお体お大事に。



 追伸:前便で「老アキバ系」と書いたら、「イシイはメイド喫茶に入り浸りなそうな」などと風評が飛び交ったそうです?! まあこれは冗談として(?)、かつてパソコン勃興期のアキバにはずいぶん通いました。路地を入るとメイド喫茶ならぬジャンク店や多方面の専門店があって、ネット時代以前のこととて、ずいぶんと発見のあった街です。通り魔事件にめげず、世界のアキバの「怪しい魅力」を発散し続けてほしいものです。


 さてさて、「出会い系」の「犬棒」社長のくせに、歳のせいかこのごろめっきりフットワークが鈍っております。研究会・談話会それに飲み会など、どうかお気軽に誘ってやって下さい。せめて気分だけでも軽やかにして、なんとかこの夏も生き延びたいと思っております。


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風響社つうしんの号外です  2008年7月15日


皆さま


 前便でお伝えしましたように、ブラジル日本移民百周年を記念した事業を小社でもお手伝いすることとなりました。


 その第一弾となる写真集『目でみるブラジル日本移民の百年』は4月刊行に向けて現在編集中ですが、そうした現地の貴重な写真がJICAの協力を得て、縁の深い日本の各地でパネル展示されていっております。(詳細は添付ファイルを参照下さい)


 http://www.jomm.jp/events/2007/brasil.html


 セピア色、色あせたカラー、現在の綺麗な画像と、写真は映し出された内容とともに、刻印するかのように時の移ろいを付け加えます。


 この正月にNHKでも放送された「奇跡の映像 よみがえる 100年前の世界」(Wonderful World of Albert Kahn:Vision of the World, BBC,2007)を見て、あらためて画像の持つ情報の質・量を思い知らされました。


 http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/080106a.html


 どのような作品も生まれ落ちた瞬間から作り手の思惑を超えて多様な意味が付け加えられていきますが、とりわけ映像作品はその情報量の多さから、飛翔力は群を抜くものがあり、見る人の持つ知識や感情、生き方などと共振して、見られる度に新たなモノとなって再生されるかのようです。


 本写真展も日本人が時空の軸をずらして異空間に刻んできた歴史を現前させてくれる、などと読むこともできそうですが、いずれにしても百年の重みが見る人それぞれに迫ってくるものと思っております。


 お近くに写真展が来ましたなら、ご覧頂けたら幸いです。また、関心ある(ありそうな)方をご存知でしたら、この情報を回覧して頂きたくお願い申し上げます。


 ともあれ、私個人もこの仕事を通して、この百年の変化に思いをはせながら、人の移動と文化の変容という主題、近代が人をどう動かしたか、人は歴史のうねりの中でどう生きたか、など、さまざまなことを考えてみたいと思っております。


 年度末のご多忙中恐縮ですが、いそぎご案内申し上げます。まだまだ寒い日が続いております。どうかお大事に。



追伸:写真集パンフレット、写真集に関するHPでの情報開示は近日中に作成いたします。


2伸:上記「奇跡の映像」の8・9回を録画し損ねました。お持ちの方いらっしゃれば、是非複製させて下さい。



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風響社つうしんの号外08夏です 2008年7月17日


皆さま


 いきなりの猛暑到来で、社員犬タローともども「ふーふーふーの風響社」とわが社のテーマソングが復活しているところです。お元気でしょうか。


 さて、書評本・ブラジル本の出荷も少し落ち着いてきたところに、また一つ「棚ぼた」的朗報がありました。


 東京・池袋のリブロ書籍館で「風響社既刊全点フェア!」が始まります。そんな看板が出るわけではありませんが、ともかく小社の刊行物の在庫分全点が展示販売される運びとなりました。


 大書店の片隅に並ぶとおそらくひと棚を埋めるのも難しい分量に、小社の営為のすべてが並べつくされるのかと思うと、侘しさ、羞ずかしさが先立つ思いもいたしますが、これもpublisherの宿命、それにこの売り上げはほとんどボーナスものですから、タコ社長でなくても、おもわず笑みもこぼれるというものです。


 おそらく著者が初めて自分の本の並ぶ様を見に行く時のように、こっそり物陰から現場を覗くかもしれませんが、見つけてもけっして「風響社の社長」などとお声をかけて下さらぬよう、武士の情け(?)をお願いいたします。


 また、前便でお騒がせしました、この正月にNHKで放送された「奇跡の映像 よみがえる 100年前の世界」(Wonderful World of Albert Kahn:Vision of the World, BBC,2007)ですが、この19日から集中再放送されます。


 http://www.nhk.or.jp/wdoc/


 私同様、録画し損なったり、見逃した方には、これも臨時ボーナスですね。


 その翌週の「発掘アジアドキュメンタリー」も面白そうですが、北京オリンピックのためにHDの余白も取っておかないとなりませんし……。本の置き場とデータの容量は永遠の課題?──小社の資源問題はあいかわらずウサギ小屋レベルかもしれません。


 では、調査外遊の方にはお気を付けて、国内充電の方には御身お大切に。小社は恒例の夏籠り(集中作業)のモードとなり反応が鈍くなりますのであしからず。猛暑を乗り越えてまたお目にかかりましょう。



追伸:先月下旬にHDDの不調が突発しました。完全クラッシュでなかったため、かえってじたばたと復旧を試みて傷口を広げてしまいました。家人の体調不良も加わり、なんやかやでまだ痛手から回復しておりません。この間、ご連絡が滞った方には、お詫び申します。ご返事差し上げていない重要メールがもしありましたら、お手数ですが、再送して下さいますようお願い申し上げます。


2伸:先日、江口一久先生が急逝されました。小社には刊行すべき編著が残されており、誠に申し訳なく、呆然としております。今は心よりお悔やみ申し上げる次第です。また、鈴木二郎先生もお亡くなりになったとのこと、心よりご冥福をお祈りいたします。


 お向かいの家では、夕刻、盆の送り火が焚かれておりました。生命わき立つ中、居住まいを正し先達・先人の霊に思いをいたす季節ではあります。合掌。


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