2012年

 

<風響社通信 No.26> 2012年1月1日


 新年おめでとうございます。半年ぶりの通信26号をお届けします。今年もどうぞよろしくお願いいたします。


1,新刊のご案内


 ◎『現代台湾を生きる原住民』(石垣直著、7月刊行)

 ◎『よみがえる死者儀礼』(藤本透子著、7月刊行)

 ◎『内モンゴル西部地域民間土地・寺院関係資料集 第一集』

   (チョイラルジャブ、フスレ編、8月刊行)

 ◎『韓国朝鮮の文化と社会 10号』(韓国朝鮮社会文化研究会編、10月刊行)

 ◎〈京都文教大学文化人類学ブックレット〉3冊(11月刊行)

   『中国系移民の故郷認識』(奈倉京子著)

   『インドネシアの学校と多文化社会』(金子正徳著)

   『海辺のカラオケ・「おやじ」のフォーク』(馬場雄司著)



2,近刊予定のご案内


 ◎『東南アジアの華人教団と扶鸞信仰』(黄 蘊著)

 ◎『ミャオ族の歴史と文化の動態』(鈴木正崇著)

 ◎『タイ南部のマレー人』(T. M. Fraser, Jr著、岩淵聡文訳)

 ★ブックレット《アジアを学ぼう》第五期

  ◎『中国・ミャンマー国境地域の仏教実践』(小島敬裕著)

  ◎『スターリン期ウズベキスタンのジェンダー』(須田 将著)

 ★ブックレット《アジアを学ぼう》別巻シリーズ

  ◎『デジタル・ヒストリー:スタートアップガイド』(宮本隆史著)

  ◎『ジェンネの街角で人びとの語りを聞く』(伊東未来著)

  ◎『フランス語圏カリブ海文学小史』(中村隆之著)


 予定が多くて錯綜しておりますので、とりあえず、最終工程に入ったもののみ記載します。その他、遅れ気味のものも鋭意準備中です。

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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】

 復興も除染もまだこれからとはいえ、どなたにもまっさらな年の到来ということで、新春を言祝ぎたいと思います。明けましておめでとうございます。


 昨年の天災+人災によって、日本は沈没かと思われるほどの打撃を被り、その衝撃は直接の被災者のみならず、多くの人びとの心を揺るがすこととなりました。明治以降の近代化に寄せる信奉は先の敗戦にも壊されることなく戦後の復興・経済成長を支える原動力となってきましたが、バブル崩壊後の長期不況、そして今回の複合災害によって、そうしたリニアな価値観のそれこそ価値が暴落してしまったかのように思えます。


 「坂の上の雲」への信奉が染みついたわれら老壮世代はその雲散霧消に大きな喪失感を抱き、失われた二〇年に育った青年たちは上り坂に背を向けるかのように視線を上げようとはしません。国中が焦土となったにもかかわらず、皆が明日に向かってもがいていた敗戦後の光景との落差には大きなものがあります。


 マスコミや識者が言いつのるほど政府・官僚が劣化したわけでもないと思います。薩長政権の専横腐敗もなかなかのものがありましたし、硬直化した政党政治やら軍事官僚の迷妄ぶりも今日のそれとどれほどレベルが異なるのかにわかには分かりません。


 異なるとすれば、近代化というリニアな軌道の先にあった未来への期待感なのかもしれません。このレールをひた走れば、その先には明るい未来がある、という将来への揺るぎない信奉があったればこそ、人びとの心を逞しくしてくれていた、ように思えます。


 ひるがえって今日はといえば、まあ「坂の上の雲助」でしょうか。民主だ自由だ国際化だなどさまざまな掛け声に合わせて、やっとこさっとこ登ってきたと思ったら、追い剥ぎのような現実が待っていました。おいおい話が違うよ、という悲嘆慷慨があちこちに見られます。おまけに、海の彼方には怪しげな色とりどりの「黒船」がふたたび。国家や人民の存亡を揺るがすかのように時代はうごめいています。


 もはや、自らの命、自らの家族は、自分たちで守らなければならない時代に舞い戻ってしまったかのようです。皮肉な言い方をすれば、これがほんとのグローバルスタンダードなのかもしれません。安全と水がただと言われた空前絶後のわれらの太平天国は、歴史のあだ花として雲散霧消してしまうのが歴史の必然だったのでしょう。


 歴史や世界に学ぶのがかくも難行苦行なのだとすれば、寄る辺なき市民はもう破れかぶれ、失敗や苦難を気概で乗り越えるしかありません。頑張ろう、東北、そして踏ん張ろう、トホホの僕。


 さて、社主も昨年は思わぬ心身の不調に見舞われ、5月から半年ほど仕事がなかなか進まない状況でした。この数年があまりに忙しく過ぎたことに加え、年齢的な衰えや個人的な問題が重なってのこと、どこにでもある中高年の人生模様の一つですが、版元ひとりという小社の体制が仕事の流れに大きな滞りを作ってしまったのは問題です。この間、著者や読者の方々、仕事関係の方々にはご迷惑をおかけしてしまいました。心よりお詫び申し上げます。


 お陰様で秋頃から復調してきておりますが、滞った仕事に新たな仕事も加わっていますので、外部スタッフの応援も得て、急ピッチでなんとか流れをつくろうとしているところです。ご迷惑をおかけしますが、いましばらくご容赦いただけたら幸いです。


 好事魔多しとはこのことでしょうか。昨年正月、猛烈な忙しさの中で創業20周年を刻み、なんとか年度末の締切をクリアしたかに見えた3月。あの大災害が起きました。小社の被害など無いに等しかったのですが、思い返せばあの日以後、公私ともに不具合が生じるようになり、気がついたら失われた半年となってしまいました。


 真面目に努力し、仕事に励めば報われる、ような、社主もやはりリニアな価値観にとらわれていたといえましょう。幸か不幸か、さまざまな企画が進行中でもあり、またそれなりの負債もあってあと10年ほどは否応なく働かなくてはなりません。大転換期にある出版業界の中で、努力や工夫のみで生き残れるのかどうか。まったくの五里霧中ではありますが、ふたたび夢中になって仕事に励むことにしたいと思っております。


 被災地から再建の槌音が聞こえてくる新春、一年遅れとなりましたが、小社も次の10年に向けて歩み始めます。それは、Steve JobsのInnovation、五木寛之の「下山」等を横目に、社主らしい Blowin’ In The Wind な道行きとなりそうですが、破れかけた帆を繕いつつはるか水平線を目指したいと思います。どうかさらなるご支援・ご指導をお願い申し上げます。


 本通信の読者の皆さま、そして震災や放射能汚染の被害を受けられた方々には、本年が希望の年となりますよう、心より祈念いたしております。


 

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