2014年

 

<風響社通信 No.29> 2014年1月1日


 よき新年をお迎えのことと存じます。半年ぶりの通信29号をお届けします。今年もどうぞよろしくお願いいたします。


1,新刊のご案内


 ◎『ヴェトナムのコホー族』(本多守編)

 ◎『〈新〉古代カンボジア史研究』(石澤良昭著)

 ◎『術の思想』(三浦國雄編)

 ★ブックレット《アジアを学ぼう》

  ◎27『たけしまに暮らした日本人たち』(福原裕二著)

  ◎28『文書史料が語る近世末期タイ』(川口洋史著)

  ◎29『インドにおける代理出産の文化論』(松尾瑞穂著)

 ◎『韓国朝鮮の文化と社会 12』(韓国・朝鮮文化研究会編)

 ◎『比較日本文化研究 16』(比較日本文化研究会編)


2,近刊予定のご案内


 ◎『レッスンなきシナリオ』(田村克己著)

 ◎『テレビが映した「異文化」』(白川千尋著)

 ◎『「私たちのことば」の行方』(松川恭子著)

 ◎『「開発」を生きる仏教僧』(岡部真由美著)

 ◎『中央アジア灌漑史序説』(塩谷哲史著)

 ◎『変容する華南と華人ネットワークの現在』(谷垣真理子・塩出浩和・容應萸編)

 ◎『せめぎあう宗教と国家』(石原美奈子編)

 ◎『現代アジアにおける華僑・華人ネットワークの新展開』(清水純編)

 ◎『文化資源の生成と変貌』(塚田誠之・武内房司編)

 ◎『境域の人類学』(上水流久彦・村上和弘・西村一之編)

 ◎『台湾における日本認識』(三尾裕子編)

 ◎『画像が語る 台湾原住民の歴史と文化』(清水純著)

 ◎『越境する身体の社会史』(帆刈浩之著)

 

 予定が多くて錯綜しておりますので、とりあえず、最終工程に入ったもののみ記載します。その他、遅れ気味のものも鋭意準備中です。


3,電子書籍の発行


 ◎『客家』(瀬川昌久著)

 ◎『葬儀の植民地社会史』(胎中千鶴著)

 ◎ブックレット《アジアを学ぼう》既刊32巻


 評価の高い品切れ書籍2点とブックレットシリーズから、まずはお届けする予定です。


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 いずれも、詳細は小社ホームページをご覧下さい。

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【後記】


 へび年らしく竜頭蛇尾だったのでしょうか、国の看板政策がいつの間にやら「富国」から「強兵」に掛け替えられたかのような昨年後半でした。さらに年末のマイ・アニバーサリー的靖国参拝によって、このうま年の行方はますます雲行きが怪しくなってきそうです。


 近隣諸国の言い分がすべて正しいなんて思いませんが、わが宰相の歴史観もそれほど成熟したものなのかどうか。いや、そもそも正しい歴史などというものがあるのかどうかがまず問題かもしれません。正しいことばかりしてきた人間などいないのと同様、人間の集団も社会も国家も往々にして誤りを冒します。


 問題は、そんな不完全な者同士が利害を争う時です。法律だって人の評価だって相対的なもので、うかうかしていると係争に負けてしまいますから、かつては力づくで利害を裁断し、勝者がその時々の歴史を作ってきたわけです。暴力で決めることが「悪」とされつつある21世紀の今日では、正邪は多数決で決まるものと思わなくてはならないのでしょう。


 あれれ、政権批判を始めようとしたら、話がちょっとねじれちゃってますね。この流れからすると、絶対多数を取った現政権のやることは「正しい」ことになってしまいます……。おそらく、多分、きっと「正しい」のでしょう。


 とてもソクラテスのようには生きられない社主などは、それでも現政権のやり方は「間違っている」と思うのですが、まあ、「テロリスト」にもなれない社主としては、せめて次の選挙での「倍返し」を夢見るしかありません。


 少なくとも、分の悪くなった国際社会の評判や立ち位置は、現政権のうちにきちんと始末してほしいものです。執拗なロビー活動や説得力のある「プロパガンダ」を、オリンピック招致活動の「百倍」やると思えば決してできない話ではないはずです。正しければ勝てるなんてナイーブに思い込まず、勝てるストーリーをどのぐらい作り流布できるか、すなわちゲームそのものを設定するしたたかさで取り組んでほしいと願うばかりです。


 人生の功罪は個人がその結果責任を負わなければならないのと同様、国家の指導者たる者は自らの施策によって国が受けたさまざまな結果の責任をきちんと負うべきでしょう。被災地や沖縄だけへの負担押しつけも歪んでますが、知らしむべからずの大本営発表の果てに、負けたら一億総懺悔なんていう悪平等なんて、まったく「美しくない」と思うのです。


 お屠蘇気分で、とんだ論理迷走の通信となってしまいましたが、タコ社長は今年も多くの刊行「責任」をかかえての越年です。年度末を目指して頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。



 さて、遅れていた電子書籍もかなり準備が進んできており、近日中にはなんとかデビューとなる予定です(http://yondemill.jp)。アマゾンやiBook、楽天その他の書店サイトにも、条件が整えば進出したいと考えておりますが、専門書にとっては、どこもまだまだ未熟・不完全な店構えです。


 八百屋や米屋・酒屋さんがスーパーやコンビニに吸い込まれたしまったように、書店もネットに吸い込まれ、大根もアパレルも書籍もみんな価格や利便性の比較でワンクリックされる陳列品に平準化されてしまいました。マルクスもびっくりの商品化社会がリアル・バーチャルの枠を超えて出来上がってしまいつつあります。日進月歩の技術を学びつつ、揺れ動く販売網の行方を見定めてゆきたいと思っております。


 一方で、文字・音楽・映像などコンテンツの制作・流布の仕組みも日に日に簡便となり、マスメディアの存立を根底から切り崩し、「個」の発信を無限大に高めました。結果、ネット空間にはピンキリの「作品」が溢れかえり、もはや巨大な夢の島──うまく探せばお宝も見つかるヨ──状態となりつつあります。


 そんな時代の出版社の立場と言えば、おそらく製造業からサービス業への転換ということになりそうです。本という製品を大量に作りストックし、少しずつ売って投下資本を回収していく、いわば家電や自動車業界と同じ業態にいたのが、著者のコンテンツを預かり付加価値を付けて市場にプレゼンするという、インキュベーター+プロモーター的な業態へと移っていかなければ、もはや立ちゆかないところにさしかかっているようです。


 学術書においては、さらにコンテンツの内容の吟味や質の保証を版元が一定程度担うことも必要となってくるでしょう。一種の「格付け機関」の役割ですね。高名な老舗出版社の「権威性」の驥尾に付して、少しでもそうした役割が担えるよう、さらに刊行リストの水準を高めていきたいと思っているところです。


 社主自身がそうした業態変化にすべて立ち会えるのかどうか、それは分かりませんが、持ち合わせた手札を活かしながら、この激動期になんとか活動を維持していきたいと願うのみです。当面は、新旧の業態のいずれでも対応できるようなところを目指したいと思っておりますので、どうぞ気軽に声をかけてみて下さい。


 例年同様、愚痴も希望もないまぜのご挨拶となってしまいましたが、希望を捨てずに、この一年をまた歩んでゆきたいと思っております。どうかさらなるご支援・ご指導をお願い申し上げます。


 本通信の読者の皆さま、そして震災からの復興途上の方々には、本年が希望の年となりますよう、心より祈念いたしております。



追伸:新年早々恐縮ですが、小社の社員犬タローが昨年暮れに「退社」となりましたことをご報告させていただきます。16歳を目前に安らかな旅立ちでした。どんな時も社主を励ましてくれた僚友を失い、今年をどのように乗り切るか思案中ですが、しばらくは業務繁多でなんとかなりそうですので、ご放念下さい。



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